NOI:建物の給与明細書

給与明細を開いた瞬間、人がまず目を向けるのは、一番上に印字された「額面給与」ではありません。

NOI:建物の給与明細書

給与明細を開いた瞬間、人がまず目を向けるのは、一番上に印字された「額面給与」ではありません。目が向かうのは一番下の行、税金や保険料などあらゆる控除が差し引かれた後に、実際に口座へ振り込まれる「手取り」の金額です。契約書に書かれた「年収5万ドル」という数字と、実際に毎月口座に入ってくるお金との間には、常にギャップが存在します。そのギャップを理解していない人は、自分が本当はいくら稼いでいるのかを分かっていないのと同じです。

建物もまったく同じ種類の明細書を受け取ります。その名は**NOI(ネット・オペレーティング・インカム、純営業収益)**です。

家賃は「額面給与」であって「手取り」ではない

建物の新米オーナーが陥りがちな、ある特定の誤解があります。「この建物は年間30万ドルの家賃を集めている」と聞いた瞬間、その30万ドルをまるごと自分のものだと考えてしまうのです。しかし、家賃としての30万ドルは建物の「額面給与」であって、「手取り」ではありません。そのお金がオーナーの手元に届くまでには、固定資産税、火災保険料、清掃・警備の人件費、共用部の光熱費、エレベーターの点検費用、細々とした修繕費、管理会社への報酬など、あらゆる費用が先に差し引かれます。そのすべてが差し引かれた後に残るお金こそが、建物が本当に稼いだ収益、すなわちNOIです。

計算式はこうなります。

NOI = 総収入(家賃+その他収入)− 運営費用

ここで重要なのは、「運営費用」に何が含まれ、何が含まれないかという点です。ここが、建物の給与明細を正しく読み取れるかどうかの分かれ道になります。

明細書に決して載らない2つの項目

給与明細に「ローンの返済」や「来月の旅行予算」が載ることは決してありません。それらは会社が支払う給与とは別の、個人の財務上の判断だからです。NOIもまったく同じで、この明細書には決して現れない2つの項目があります。

ひとつ目は債務返済(デット・サービス)、つまり元本と利息の支払いです。建物を買うためにどれだけの借入をし、どんな金利を適用されたかは、建物自体がどれだけ稼いでいるかとは無関係です。現金一括で建物を買った人と、半分を借入で調達した人とでは、まったく同じNOIになるはずです。NOIが測るのは「建物自体がどれだけ稼いでいるか」であって、「建物を買った人の懐にいくら残るか」ではありません。後者は「キャッシュフロー」と呼ばれる別の指標で、債務返済も差し引いた後に初めて出てくる数字です。給与明細の言葉で言えば、NOIが手取り給与であり、キャッシュフローとは、たとえば賃貸の敷金を工面するために組んだローンの月々の返済分もさらに差し引いた後に残る金額に相当します。手取りが同じでも、どれだけ借金を抱えているかによって、最終的に手元に残る金額は大きく異なります。それと同じで、NOIが同じ建物であっても、どのように資金調達されているかによって、オーナーの懐事情はまったく異なる結果になり得るのです。

ふたつ目は減価償却です。標準的な会計処理では、建物は毎年少しずつ老朽化していくものとみなされ、それに対応する費用が計上されます。しかしこれは実際に誰かの口座からお金が出ていくわけではなく、純粋に帳簿上だけで発生するものです(このテーマは次章で詳しく掘り下げます)。NOIは実際に現金が動く項目だけを捉える指標なので、減価償却もまたこの明細書には決して現れません。

この2つが除外される理由は共通しています。NOIを、誰がどのように買ったかとは完全に切り離された、建物自身の稼ぎを測る指標にするためです。どれだけ大きな借入をしていようと、会計士が減価償却をどう計算しようと、テナントから実際に集めたお金と、建物を運営するために実際に使ったお金の差は、たったひとつの数字に収束します。それがNOIです。

この数字がこれほど重要な理由

NOIが重要な理由はシンプルです。不動産の値付けに使われるほぼすべての計算が、この数字を出発点にしているからです。

前章で扱ったキャップレートを思い出してください。キャップレート=NOI÷価格でした。NOIを間違えれば、たとえば債務返済をうっかり運営費用に紛れ込ませてしまえば、そこから導かれるキャップレートも、結果として算出される建物の「値札」も、まとめて狂ってしまいます。買い手が仲介業者から受け取る資料に、すでに債務返済を差し引いた「純収益」の数字が載っている場合、その数字は売り手固有のローン条件によってすでに歪められています。買い手は自分自身の資金調達条件を使って、建物の本当の稼ぎを計算し直す必要があります。DSCR(ローンの元利返済カバー率を測る指標で、後の章で扱います)や、建物の適正な購入価格を逆算するあらゆる公式は、すべてNOIを起点にしています。給与明細を読み違えれば、それ以降のあらゆる資金計画が狂うのと同様に、NOIを間違えれば、その上に積み上げられたあらゆる判断もまた狂ってしまうのです。

同じ家賃、異なる稼ぎの2つの建物

同じ家賃を集めている2つの建物を考えてみましょう。ひとつはリスボン都心にある老朽化した5階建てのビル、もうひとつはシンガポール郊外に新築された物流倉庫です。どちらも年間100万ドルの家賃を集めています。つまり額面給与は同じです。

しかしリスボンの古いビルは、維持すべきエレベーターが2基あり、老朽化した配管が大小の修繕費を絶えず生み出し、より大きな管理スタッフを必要とします。運営費用が40万ドルかかるとすれば、NOIは60万ドルになります。一方、シンガポールの新しい倉庫は構造がシンプルで設備も新しいため、維持費ははるかに安く済みます。運営費用が15万ドルだとすれば、NOIは85万ドルになります。

同じ給与をもらっていても、毎月の医療費やローンの利息がかさむ人とそうでない人とでは、最終的な手取りはまったく異なるものになります。だからこそ、「家賃はいくらです」と聞いただけで、ある物件を「良い物件だ」と判断することはできません。本当に問うべきなのは、「運営費用を差し引いた後、いくら残るのか」ということなのです。

明細書を粉飾する、いくつかの手口

会社が給与明細を体裁よく見せることができるのと同様に、売り手にも建物のNOIを実際より良く見せるための手口がいくつか存在します。

最もよくある手口は、運営費用を過少計上することです。大規模修繕を先送りし、メンテナンススタッフを削減し、売却直前の1年間だけ広告費を切り詰める。そうやってその年のNOIを膨らませ、その数字を基準に建物の価格を決めるのです。これはちょうど、転職の直前だけ残業代を前倒しで積み増して、その月の給与明細だけを異常に分厚く見せるようなものです。だからこそ、百戦錬磨の買い手は1年分のNOIだけでなく3〜5年分の推移を求め、運営費用の項目をひとつひとつ洗いながら、「この数字は本当に持続可能なのか」と問い続けるのです。

もうひとつの手口は、空室率を過少に見せることです。ある建物が今この瞬間は満室であっても、リース満了の波がまとめて押し寄せる時期が近づいていれば、将来のNOIは今の水準を維持できません。今日の給与明細が良いからといって、来年の給与が保証されるわけではないのと同様に、今日のNOIが良いからといって、来年のNOIが保証されるわけではないのです。

世界のどこでも同じように機能する計算

この計算の力強さは、どの国でもまったく同じように機能するという点にあります。固定資産税率は国によって異なり、費用項目の呼び名も異なり、賃貸借の慣習も異なります。しかし、「総収入から実際に運営にかかった費用を差し引く」という根底の構造は、どの国境でも止まることがありません。ニューヨークのオフィスタワーであれ、サンパウロのショッピングモールであれ、バンコクのサービスアパートメントであれ、すべての建物オーナーが自らに問わなければならない問いはひとつです。「この建物は実際に、口座にいくら残してくれるのか」。ローンの条件も、会計士も、国境も、この問いには手を出せません。NOIとは、建物の飾り気のない、純粋な稼ぎそのものなのです。

ゲームの法則 — 家賃は建物の額面給与、NOIはその手取りです。ローンの利息も減価償却も、この明細書には決して現れません。それらは建物自身の稼ぎではなく、買い手側の事情だからです。不動産のあらゆる値札は、この一行から始まります。


Sources

  • NOI’s definition (cash-flow-centered, excluding depreciation and debt service) and its distinction from CFO (cash flow from operations): adapted from William J. Poorvu with Jeffrey L. Cruikshank, The Real Estate Game (Free Press, 1999)
  • The practice of sellers depressing operating expenses just before a sale to inflate NOI, and buyers’ need to verify multi-year trends: adapted from William J. Poorvu with Jeffrey L. Cruikshank, The Real Estate Game (Free Press, 1999)
  • The cap rate = NOI ÷ price formula, and the structure by which NOI underlies later metrics such as DSCR: see Chapter 3 of this volume.