減価償却 ― 紙の上でだけ歳をとる建物

何年経っても、画面の中では同じ年齢を演じ続ける俳優がいます。

減価償却 ― 紙の上でだけ歳をとる建物

何年経っても、画面の中では同じ年齢を演じ続ける俳優がいます。シリーズが二十年続いても、登場人物の設定年齢は動きません。俳優は目に見えて歳をとっているのに、台本の上の人物は歳をとらない。紙の上の年齢(台本)と、実際の年齢はまったく別の軌道を走っているのです。

建物の帳簿も、これとよく似た手品を、逆方向に演じます。実際の建物は、きちんと手入れされていれば、むしろ価値を高めていくことができます。周辺環境に対する立地の相対的な向上、賃料の上昇、資産価値の値上がり。しかし帳簿の上では、律儀に毎年少しずつ歳をとっていきます。この、紙の上だけで起きる老化が減価償却です。

老化していないのに、なぜ「老化」と呼ぶのか

税法の論理はこう組み立てられています。建物を、機械や自動車のように時間とともにすり減り、いずれ使えなくなる資産として扱う。そこで税務当局は建物の価格を一定期間(商業用建物であれば国によって異なりますが、おおむね30〜40年程度が目安です)に分割し、所有者に毎年その分を「費用」として計上させます。企業が設備を購入し、その機械の摩耗分を毎年費用計上するのと同じように、建物のオーナーも「今年これだけ建物が摩耗した」という金額を、毎年控除していくのです。

ここで重要なのは、この費用が実際に誰かの銀行口座から出ていくお金ではないという点です。減価償却は銀行口座には何の痕跡も残しません。それは単に、税務当局に提出する書類に押される数字にすぎません ―「今年、建物の帳簿価額はこれだけ下がった」というだけの話です。その一方で実際の建物は、外壁が塗り直され、ロビーが改装され、テナントの満足度が上がり、賃料は前年より実際に上昇しているかもしれません。紙の上では建物は歳をとり、現実には若返っているかもしれない。この矛盾こそが、減価償却の本質そのものなのです。

税金の請求書に何が起きるか

この紙の上の老化が重要なのは、それが実際に税金を減らすからです。前の章のNOI(純営業収益)を思い出してください ― これは実際に現金が動く項目だけを捉えています。しかし税金を計算する段になると、話が変わります。税務上の「課税所得」を計算するには、NOIからさらにもう一度、減価償却分を差し引きます。これは純粋に紙の上だけの控除であり、実際にどこかへ流れていくお金ではありません。

ある建物のNOIが10万ドル、ローンの元本返済に3万ドル、帳簿上の減価償却が4万ドルだったとしましょう。オーナーの手元に実際に残る現金は、NOIから元利返済を引いておよそ7万ドルです。しかし税務当局に申告される課税所得は、10万ドルから4万ドルの減価償却を引いた6万ドル ― あるいはそれより低くなることさえあります。つまり、課税の基準となる金額(課税所得)が、実際に手元に入る現金(キャッシュフロー)よりも低くなり得るということです。実際には利益が出ているのに、書類の上では損失に見える、ということが本当に起こり得るのです。

不動産が長年「税制優遇資産」と呼ばれてきたのは、まさにこのためです。建物が紙の上で老いたふりをする代わりに、現金は入り続けているのに納税額は縮小する、という期間が生じ得るのです。ただし、これはタダではありません。多くの税制には、この積み上がった紙の上の減価償却分を後で「リキャプチャー」し、建物を最終的に売却する時点で課税する仕組みが用意されています。紙の上で先送りされていた老化の請求書は、売却の瞬間にまとめて届くのです。

「理想的」とされる姿

税務の専門家は、理想的な姿をこう説明します。減価償却が元本返済額を上回っているとき、実際に手元にない現金に課税されるという最悪の事態は避けられます。逆に元本返済が減価償却を上回ると、現金は着実に口座から出ていく(ローン返済のために)一方で、それに見合うほど税金は減らないという不利な組み合わせに陥ります。

厄介なのは、このバランスが税法が変わるたびに揺れ動くという点です。たとえば米国では、1980年代初頭には商業用不動産の減価償却期間が15年(年率6.3%の償却)でしたが、その後の法改正で商業用不動産についてはおよそ39年まで延び、年間の減価償却率はおよそ2.5%まで縮小しました[1]。減価償却期間が長くなるほど、毎年認められる紙の上の老化分は小さくなり、税制メリットは薄くなっていきます。こうした具体的な数字やルールは国や時代によって異なり、これからも変わり続けます。重要なのは特定の数字を暗記することではなく、その背後にある構造を理解することです ― 紙の上の老化の速度を決めているのは、建物の実際の状態ではなく、その年の税法だということです。

REITの帳簿でも起きる同じ手品

この紙の上の老化は、REIT(不動産投資信託)の帳簿で特に劇的に現れます。REITは複数の建物をまとめて株式のように持分を売り、その会計上の純利益はしばしば奇妙な絵を描きます。保有する建物の賃料や価値が実際に上昇していても、減価償却が純利益を大きく蝕み、帳簿上はほとんど損失に近い数字になることがあるのです。REIT業界がFFO(Funds From Operations)という独自の指標をわざわざ発明したのは、まさにこのためです。これは純利益に減価償却を足し戻し、「実際にどれだけの現金が本当に手元に残っているか」を示すものです。いわば、紙の上で削ぎ落とされた年齢を元に戻し、実際の体調を測り直しているようなものです。REIT業界がわざわざ別の指標を発明せざるを得なかったという事実そのものが、会計上の減価償却が現実からどれほどかけ離れうるかの証明でもあります。

税制メリットと実質的な価値は、別の物語

ここではっきり指摘しておきたい罠があります。減価償却が生み出す税制メリットと、建物の実質的な価値はまったく別の物語だということです。減価償却は純粋に税務計算上の仕組みであり、建物が実際に悪くなっているか良くなっているかとは何の関係もありません。東京都心のランドマークオフィスビルと、リマ郊外の老朽化した倉庫が、まったく同じ税務上の減価償却スケジュールの対象になり得ますが、その実際の価値がたどる道筋はまったく異なります。一方は賃料も価格も時間とともに上昇するかもしれず、もう一方は本当に劣化し続け、絶えず資本的支出を必要とするかもしれません。書類上は「両方とも毎年同じ速度で老化している」ことになっています。しかし現実は違います。

このギャップを見落とすと、二つの典型的な誤りに陥ります。一つは「減価償却で節税できているのだから、この建物は良い投資だ」と思い込むことです。税制メリットはボーナスであって、投資の本質ではありません。まず問うべきは、建物が実際に賃料を集めているか、その賃料に伸びしろがあるかどうかです。もう一つの誤りはその逆で、「紙の上の減価償却額が大きいのだから、この建物はもうすぐ使えなくなるに違いない」と心配することです。減価償却額の大きさは単に税法の定めるスケジュールに従っているだけであり、建物の実際の残存耐用年数とは関係がありません。

歴史を振り返ると、このギャップがあまりにも大きく開いてしまった時期もありました。税制メリットが特に手厚かった時代には、実際にはキャッシュフローが黒字の不動産であっても、他の所得と相殺するための紙の上の損失を生み出す目的で保有されるケースが数多くありました。投資判断は建物の実質的な経済性よりも、「この損失を税務上どう活用するか」によって動かされていたのです。その後、減価償却期間が延び、損失相殺のルールが厳格化されると、この構造は概ね姿を消し、そもそも納税義務のなかった年金基金などの非課税機関投資家が、相対的に有利な立場に立つことになりました[2]。これは、税制がいかに投資の本質を歪めうるかという教訓であると同時に、建物の実質的な経済性に基づく投資こそが、税制メリットを追いかける投資より長く生き残るという教訓でもあります。

書類ではなく、建物そのものを見る

結論はシンプルです。減価償却は有用な税務ツールであって、建物の健康診断ではありません。物件を検討する際、どれだけの減価償却が計上されているかを知っておくことに意味はありますが、その数字で建物の本当の状態を判断してはいけません。本当に問うべきことは別のところにあります。この建物は実際に劣化しているのか、それとも改善しているのか。テナントはこれからもここにいたいと思い続けるのか。答えは税務当局の減価償却スケジュールからではなく、建物が立つ街と、その中で実際に起きていることから得られるのです。

ゲームの法則 ― 減価償却は建物を紙の上で老いさせるだけで、実際の建物を老いさせるわけではありません。税金を減らしはしますが、それは免除ではなく先送りにすぎず、請求書は売却時にもう一度届きます。紙の上で古い建物が、現実にも古いとは限らず、紙の上で若い建物が、現実にも若いとは限らないのです。


出典

  • 減価償却の定義(キャッシュフローとは無関係な紙の上の老化プロセス)と、CFOおよび課税所得の計算構造について: William J. Poorvu with Jeffrey L. Cruikshank, The Real Estate Game(Free Press, 1999年)に基づき再構成。
  • 減価償却リキャプチャーの概念と、適用される税率構造について: William J. Poorvu with Jeffrey L. Cruikshank, The Real Estate Game(Free Press, 1999年)に基づき再構成。
  • REITのFFO(純利益に減価償却を足し戻した指標)が、減価償却による歪みを補正するために設計された経緯について: William J. Poorvu with Jeffrey L. Cruikshank, The Real Estate Game(Free Press, 1999年)、本書第15章(REIT)参照。
  • [1] 米国税法の変遷(減価償却期間が15年から39年/27.5年へ延長され、年間償却率が6.3%からおよそ2.5%へ縮小した点。歴史的参考として引用): William J. Poorvu with Jeffrey L. Cruikshank, The Real Estate Game(Free Press, 1999年)に基づき再構成。
  • [2] 1980年代の減価償却期間延長と損失相殺ルール厳格化を受けて、税制メリット主導の投資構造が縮小し、非課税の機関投資家が相対的優位を得た経緯について: William J. Poorvu with Jeffrey L. Cruikshank, The Real Estate Game(Free Press, 1999年)に基づき再構成。