なぜこの案件が自分に回ってきたのか ― 良い物件が売れ残らない理由について

中古車販売店で、状態が異様に良い一台を見つけたとします。

なぜこの案件が自分に回ってきたのか ― 良い物件が売れ残らない理由について


中古車販売店で、状態が異様に良い一台を見つけたとします。年式のわりに走行距離は少なく、価格も相場より安い。心拍数が上がります。しかし、絶対に飛ばしてはいけない問いがあります。「これほど良い車が、なぜまだここにあるのか」。本当に良い車ならとっくに売れているはずです。それがまだ残っているという事実自体が、一つのシグナルかもしれません ― 先にそれを見た人たちが、何かに気づいて手を引いた、というシグナルです。

不動産も、同じ問いから逃れることはできません。魅力的な物件が目の前に現れた瞬間、真っ先に問うべきは「価格はいくらか」ではなく、「なぜよりによってこの案件が自分に回ってきたのか」なのです。

相手はいつも自分より多くを知っている

経済学には、この現象を正確に言い表す概念があります。「レモン市場」です。経済学者ジョージ・アカロフは中古車市場を使ってこれを説明しました。核心はシンプルです。売り手は商品の本当の状態を知っているが、買い手は知らない。この情報の非対称性のもとでは、良い商品(「桃」)を持つ売り手は正当な値をつけてもらえず、市場には長く売れ残る不良品(「レモン」)が不釣り合いに積み上がっていきます。買い手は桃とレモンを見分けられないため、平均的な価格しか払おうとせず、それが良い商品を持つ売り手を市場から締め出してしまうのです。

不動産取引では、この非対称性がはるかに極端な形で現れます。売り手はすでに知っています。配管が三年以内に全面交換を必要としていること、最大のテナントが更新しない兆候を見せていること、隣接地に建設される新しい高架道路がアクセスを悪化させること。買い手はそれを知りません。異様に条件の良い物件に出会ったとき、最初に湧くべき感情は興奮ではなく疑念であるべきなのです。

「なぜ自分に」と問う習慣

ハーバードで長年不動産実務を教えてきたウィリアム・プアヴは、案件が舞い込むたびに自分自身にこう問うことを習慣にしていたと語っています。「なぜ自分に」。そして、売り手の本当の動機を突き止めることこそが、あらゆる交渉が最初に通らなければならない関門だと述べています[1]。良い物件は、そもそも市場に長くとどまりません。もし本当に魅力的なものであれば、その地域を熟知した地元投資家や、密なネットワークを持つ機関投資家が、すでに押さえているはずです。それでもある物件があなたのもとに漂ってきているなら、たいてい次の二つのどちらかです。あなたが誰も持っていない特定の強み ― そのテナント業態を扱った経験、その地域での人脈 ― を持っているか。あるいは、これまで見た全員がすでに気づいていた問題を、あなただけがまだ見つけていないか、です。

前者であれば、それは贈り物です。ある不動産会社による大型オフィスポートフォリオの買収は、まさにそのケースでした。売り手である保険会社は、上位二、三社としか交渉しないと発表していました。この会社は、19棟の建物と多数の個別テナントを抱えるこのポートフォリオの運営の複雑さが、大半の競合を尻込みさせるだろうと判断しました。そして同社はワシントンD.C.エリアで同種の資産をすでに運営した実績があったため、その複雑さは足かせではなく交渉上の武器になったのです[2]。「なぜこれが自分に回ってきたのか」への答えは、「このごちゃごちゃを扱えるのが自分しかいないから」でした。

なぜ二番目・三番目のオーナーの方が幸せなことが多いのか

問題は後者のケースです。不動産にはこんな古い格言があります。「幸せな最初のオーナーより、幸せな三番目のオーナーの方が多い」[3]。最初に開発したり購入したりした人は、たいてい自分の計画への思い入れと、すでに注ぎ込んだ埋没費用によって、問題が見えなくなっています。二番目、三番目の所有者は、前のオーナーがすでに問題をひと通り解消し尽くした資産を、冷静に割り引かれた価格で手に入れることが多いのです。「なぜこの物件が自分のところに流れてきたのか」への答えが、「前の二人のオーナーがすでに頭を悩ませて売却したから」だとしたら、それは危険信号ではなく、むしろ情報です。ただしそれが良いシグナルになるのは、それを見抜いてきちんと価格に織り込める買い手にとってだけです。

国境を越えると、この問いは生死を分ける問題になる

国境を越えた取引でこの問いを飛ばすと、その代償ははるかに厳しい形で跳ね返ってきます。国内取引に比べて、情報の非対称性が何倍も大きいからです。

東南アジアの人気リゾート地で繰り返し現れるプレセール詐欺のパターンは、その典型例です。「利回り保証10%、十年後の買い戻し保証」といった、実際の市場が到底支えられない条件でユニットが販売されます。市場の実際の賃貸利回りに比べて条件が異様に良く見える取引では、その上乗せ分がすでに購入価格に織り込まれているか、あるいは後から入ってくる投資家の資金で先行投資家に配当を払うポンジ型の仕組みで賄われているのが典型です[4]。「なぜこんなに気前の良い話が自分に来ているのか」を問わなかった投資家は、保証期間が終わった途端に利回りが半分に切り下げられたり、デベロッパーがそのまま姿を消してしまったりする事態を、繰り返し目にしてきました。

バリ島では、SNSで大きなフォロワーを抱えていた外国人デベロッパーが、その信頼を利用して複数国の投資家から多額の資金を集めながら、約束していたヴィラを建設しないまま姿をくらませた事件がありました[5]。華やかなマーケティングと気前の良い条件の裏には、問うべき問いがありました。「なぜこの人物は、自分のような外国人にこれほど良い条件を提示するのか」。それを問うだけで、もう一段階のデューデリジェンスの機会が得られたはずです。エスクロー規制や開発保証制度が整ったドバイやヨーロッパの一部の市場では、良い物件がこのように腐るまで放置されることははるかに少なくなります。規制そのものが市場の情報非対称性を狭めているところでは、レモンが早く排除されていくのです。

疑念をレバレッジに変える

ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。「なぜこれが自分に回ってきたのか」と問うことの目的は、良い案件を反射的に避けることではありません。むしろその逆です。その問いに自分自身で答えられること自体が、その案件に踏み込む資格を得るということなのです。市場が抱く疑念に明確な理由があり、その理由がたまたまあなた自身の強み ― 直し方を知っている問題、対応できる複雑さ ― と重なるなら、あなたはまさに他の誰もが見送った機会を掴んでいることになります。しかし条件の良さに惑わされて足を踏み入れ、なぜその案件が自分の机の上に舞い込んだのかを一度も説明できないまま契約するのなら、それは中古車販売店で「なぜこんなに安いのか」と一度も問わずに契約書にサインした買い手と何も変わりません。

第一部の締めくくりに

本書の第一部は、このゲームの基本的な体の使い方を作ってきました。数字の文法を人体に、交渉を求愛に、デューデリジェンスを信用調査になぞらえて。そして最後のこの一篇が示しているのは、これまで扱ってきたあらゆる数字や手続きよりも前に持つべき姿勢です。物件に心惹かれたその瞬間に、一呼吸置いて自分に問う習慣 ― 「これほど良いものなら、なぜ自分を待っていたのか」。その問いに自分で答えられるようになって初めて、次の段階 ― お金が国境を越えていく第二部 ― に進む準備が整うのです。

ゲームの法則 ― 魅力的な物件がまだ売れていないという事実そのものが、一つの情報です。「なぜよりによってこれが自分に回ってきたのか」に自分自身で答えられないなら、その答えはすでに、先にそれを見た人たちが見抜いて手を引いた何かかもしれません。


出典 [1] (Poorvu, The Real Estate Game, chap. 3) ― 「なぜ自分に」という自己確認と、交渉に先立って売り手の真の動機を特定するという原則。 [2] Brief 03 ― JBGによるTwinbrook Metroポートフォリオ買収交渉。運営の複雑さが競合入札者をふるい落とした事例。 [3] Brief 09 (Poorvu, The Real Estate Game, chap. 9) ― 「幸せな最初のオーナーより幸せな三番目のオーナーの方が多い」という格言の引用。 [4] 東南アジアにおける「利回り保証」マーケティングの仕組みと、ドバイRERAによる規制対応。 [5] (損失総額・被害者数は報道によって大きく異なり、ここでは特定しない。関連報道にはイズヴェスチヤ紙、The Bali Timesなどがある)。